評論（書籍） 使命と魂のリミット

使命と魂のリミット (角川文庫)

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東野 圭吾
角川書店(角川グループパブリッシング)
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著者:　東野圭吾
初版:　2010年2月25日
種類: サスペンス
5段階評価:　4・・・読書ビギナーには最適です


研修医・氷室夕紀は日々の業務と向上に務める日々と共に、
その胸には秘めたるものが存在していた。

父の手術をした男 母に近づくこの男
西園陽平は、自身の術後に亡くなった父親の代わりの様に母親に近づいてきている。素晴 らしい医者であることは間違いない。だが日々のストレスと比例するように彼女の不信感 は増すのだった。

そんなある日、病院に脅迫文が届けられる。

「医療ミスを公表しなければ病院を破壊する」

担当医は西園陽平。
彼女の中でくすぶっていた何かが動き出そうとしていた。


お手本の様なミステリー
様々な群像劇から始まり、徐々に風呂敷が広がったと思ったら事件発生。
なんて言うか文章の書き方が実にうまいと思った。
 
私的には犯人が寂しくも愚かな存在だったのが良かったです。
読めば分かりますが、結局は犯人の逆恨みでしかないんですよね。どう考えても矛先違う だろ。そして犯行のために他の女性を利用って同情出来ない…だが、それがいい！

推理物の犯人に救済処置なんて要らん！

題名も含めて全体的に綺麗にまとまった作品でしたね。
読書の登竜門として最適なんじゃないでしょうか。

村上春樹などが好きな玄人読者には不評な東野圭吾ですが、
やっぱり私は好きな作家ですね。


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評論（書籍） 誰か

誰か ----Somebody

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宮部 みゆき
実業之日本社
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著者:　宮部みゆき
初版:　2005年8月25日
種類： サスペンス
5段階評価:　2・・・凄く淡々とした物語です


妻は大財閥「今多コンツェルン」会長・今多嘉親の娘である。
杉村三郎はその会社の広報室で働いていた。

誰の目から見てもコネではあるのだが、
誰からと責められることも無く、杉村自身も強く意識したことは無い。
良き妻にも恵まれ、自分に充実しているのだと漠然と思う日々である。

ある日、義父である会長から奇妙な依頼を受ける。

直属の運転手である梶田が事故で死んでしまい、
その娘たちが父の生きざまを本にしたいと言うのだ。

断る理由もなく杉村は引き受けるのだが、
梶田の軌跡をなぞるうちに奇妙な違和感を覚え始めた。


まず言いたい！

文章なげーよ！！！

初っ端からとにかく長い！

街並みの風景とか、部屋の間取りとか、どうでもいいから！
妻の容姿や性格とかを細やかに綴らなくていいから！
これからの物語に対して関係ないなら長々と書かなくていいよ！

なんでこの人の文章って回りくどくて長く表現する手法が多いのだろう。
(もちろんスタイリッシュな作品もありますが)

それを「文章力」として評するならそうなのかもしれないけどさ、
どうも私には合わないんだよな…。

宮部みゆきの作品は、とにかく文章が冗長気味。
加えてこの作品の主人公は非常に淡白、盛り上がるのは後半数ページから。
つまり退屈なのだ。とにかく読むのに根気のいる作品です。

しかもなぁ……。
結局のところ誰も救われない結末は嫌いです。

「このクソ長い物語は何だったんだ…」
と読むのにかかった時間を省みてしまう。

ところでタイトルである「誰か」だが、これは何とも意味不明である。
こじつけようと思えば何とでも解釈できるが、内容を読む限り明確となる裏付けは無い。いや、まさか「それぞれの思う犯人」を「誰か」なんて安直ではないと思いますし…総合的にメッセージ性の乏しい作品だと思いました。

ブランド作家のフィルターを通して読んでも、
これは面白くない作品なんじゃないかな？


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評論（書籍） 月のしずく

月のしずく (徳間文庫)

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浅田次郎
徳間書店 (2011-06-03)
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著者:　浅田次郎
初版:　2011年6月15日
種類： ヒューマンドラマ
5段階評価:　1・・・私の感性がおかしいのだろうか(滝汗)


誰にだってスポットが当たる瞬間はある。

何時でも、どこでも

年老いてから

何かを忘れてしまってから

ふとした瞬間から

何でもない日常が突然光り輝き出すのだ。

純粋な気持ちが生み出す、ひとしずくの奇跡。
これはそんな小さな物語達である。


有名作家、浅田次郎の短編集。
ネットでは凄く、マジで半端なく評価が高い作品です。

凄い衝撃を受けた。
こんな衝撃を受けたのは「ノルウェイの森」を読んだとき以来かもしれない。


どこが良いのかさっぱり分からん！！！


何で評価されてるの？
綺麗な物語？純粋？

どこがだよ！！

嘘だろ…嘘と言ってくれよ……
反意語的に表現してることが評価されてるんだろ？

まず表題作の『月のしずく』で絶望を感じた。
キラキラした恋物語を期待したのに男は先走って嫌われるし、女も異性依存症。
特に女性が酷いよ…あれだけ世話になって、そこまで拒絶することないべや！！

そして『聖夜の肖像』で嫌悪感を覚えた。
夫を心から愛すことが出来ずに昔の恋人を思う女性の物語なのだが、もう本当に酷かった。自分は幸せと語るくせに、前恋人への想いを正当化する語りにイライラしてしまった。とどめは、その恋人が道ばたで似顔絵描きをしていたのを発見し再会したときで、

その恋人を見て彼女は気持ちを綴るのですが…

----------------------------------------------------------------------

ねえ、純ちゃん。
あなたも幸せですか？
好きな絵を二十年もずっと描いてきたのだから、そう思っていいですね。

純ちゃんの今の暮らし、当ててみましょうか。
齢の離れた若い奥さん。とても働き者ですね。
出版社で美術全集を作ってるの。

----------------------------------------------------------------------

と、前彼の空白期間を埋めてきます。妄想で。
勝手に奥さんが居ることにして、勝手に出会い方まで決めつけて、
最後に「私も幸せよ…」って随分と都合の良い話しだね！！

『ピエタ』も酷い。
自分を散々卑下し、旦那に対してつらつらと悪口を述べて、挙げ句「私にお似合いの醜い男」って表現は本当に“綺麗な物語”なんだろうか。泣きたくなるほどの切なさがあるのだろうか。

まあ確かに泣きたくはなったが…(別の意味で)

うーん、あと10年歳をとってから読めば見解は変わるんでしょうかね？
とにかく世間の評価の様な感動は得られなかった。残念。

自分と同じ感想を持ってる方は本当にいないのだろうか。

少しでも同じ感想を持った方がいらっしゃったら、
文章は必須ではないのでweb拍手を押すだけでもしてもらいたい。


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評論（書籍） 女王陛下のアルバイト探偵 ―アルバイト探偵(アイ)

女王陛下のアルバイト探偵 (講談社文庫)

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大沢 在昌
講談社
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著者:　大沢在昌
初版:　1996年7月15日
種類： 痛快コメディアクション
5段階評価:　3・・・誰だよ

冴木隆は人生で一番の修羅場を迎えていた。
高校3年になろうかと言うのに進路がままならないのだ。
 

まず勉学は言わずもがな。
真面目な高校生である隆クンは、きちんと遊んでやってのけた。

下積みなんてあるはずもない。

よしんば受験で受かったとしても、
あの唐変木な父親が学費を蓄えてくれてるとは思えない。
 

大学生活を送ってナンパし放題なキャンパスライフを送るために
何とか策を弄しなければならない。
 

そんな時、優秀な隆クンは思いついたのだ。
「歩く国家権力」内閣調査室副室長の島津さんに裏口入学をお願いするのはどうだろう！
今までアルバイト探偵として数多くの事件を解決したのだ。それ位はやってのけるはずだ。
 

しかも再度、島津さんはやってきた。
元凄腕な行商人(本人談)の父親に折り入ってお願い事があるらしい。
 

問題となるのは日本にやってくる東南アジアの島国ライール国、女王・ミオ。
彼女は権力争いの最中、なんと日本の大学に興味を持ち見学をしたいと言うのだ。
 

権力争いに荷担したくない政府だが、
島津としては女性が狙われてる事実は無視したくないらしい。
 

これは好都合。
楽しいキャンパスライフを送るためにも、借りを作るにこしたことはないのである。

今回は長編ってことで、じっくりと読むことが出来ました。
緊迫感のある場面は多くあり、シリーズ中で初めてのめり込めた。
 

ただ、やっぱり敵の弱さには違和感が残ってしまう。
いくら隆が格闘技をかじっていたからって、それも本格的ではないのだ。なのに隆に負けてしまう殺し

屋やらなんやらが多いこと…。隆が凄いって言うよりも周囲が合わせて弱体化してる様に思えてしまう

。
 

後、なんと言っても主人公・隆の性格の変化は異常だ。
正直な感想を言わせてもらいと気持ち悪くて仕方なかった。
 

前作まで
 

『趣味はナンパで、成功したら=SEX』
 

『優柔不断な僕が悪いのだ。麻里さんか、康子か。』
 

なんて調子だったのに、今回は一途すぎて別人だ。

そもそも麻里も康子も登場しないのはなんでだ？
随所でミオを連呼する主人公・隆
 

数ページの抜粋
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リュウ君得意の、必殺ウインク。
ミオの頬に小さな笑みが蘇ったね。

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だとしても恨まない。
他の場合ならともかく、ミオのためなら恨まない。

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ミオの顔を思い浮かべた。
ミオのためじゃない。ミオのためだと思ったら自分を欺くことになる。
ミオを思う、自分のために、今、僕はここにこうしている。

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なんてこった。
溜息が出た。
リュウ君、本当のホンキでミオのことを愛してしまっているのだ。
生まれて、初めて。

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ミオが

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ミオで

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ミオも

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ミオだから

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ミオだった

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………

……

……やだ…なにこれ怖い
 

それに島津はどうなのよ？
警察国家権力の、お偉いさんでしょ？
 

主人公の未成年喫煙、飲酒、無免許運転…
それら全て黙秘して、さらに今回の事件を受けてくれたら何でも言うことを聞くってどんだけ弱み

を握られてるんだよっと！どんだけ他に人材いないんだよっと！
 

それに舞台を海外にしたことによる欠点も大きかった。
 

特に隆が英語を堪能になる点。
 

『FENばかりを聴き続けたおかげで英語のヒアリングだけは、
　なんとかこなせるようにはなってる』
 

って3日で出来るか阿呆！
しかも何だかんだでネイティブな会話してるやんけ！
 

うーん、テンポは非常に良いんだ。
 

適度な緊迫感もあるんだ。
主人公の意味不明なプラトニックさも前作までを無しとすれば読むことは出来る。

でも矛盾してる部分や無茶に感じる展開がいやに目に付いてしまった。
残念！
 

ところで、この作品を3作品読んだのだが…“探偵”であってるのだろうか(汗)
ボディガードな立場がほとんどだと思うんですがね。
 

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評論（書籍） 世界の中心で、愛をさけぶ

世界の中心で､愛をさけぶ 小学館文庫

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片山 恭一
小学館
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著者:　 片山恭一
初版:　2001年4月20日
種類： 恋愛/ヒューマンドラマ　
５段階評価:　4・・・映画か本。どっちかにしなさい！

　今更なのでストーリーは解説しません。めちゃくちゃ売れた本ですね。原作の他にも映画、連続ドラマにもなりました。私は映画を先に見て、本を読む事となりました。

映画と違って大人の朔太郎は出てきません。なので純粋に等身大の少年少女の恋愛ですね。どっちが良い？って聞かれたら多分先に見た映画だろう。というか、この作品はどっちかで充分かな？オチを知ってしまってるんだし、映画を先に見たら映画が一番に感じるし、本を先に読んだら本が一番に感じるんじゃないかな？

また、私的に朔太郎が本の方が映画より気さくな奴だったのは読んでて面白かった。ただ、時々行き過ぎてる感はある。受け取り方によっては、人の話の腰を折る、マイペースな会話を好む困った人間である。

なんにせよ丁寧に作られた作品であるし考えさせられます。ささいな願いすら叶えられない少年、少女。彼らには未来が無く、今を一生懸命に生きる姿は必ず涙を誘う事でしょう。

余談ですが、この本を読む前に後輩に「この作品、映画と違って本は大人の付き合いありますよ」って言われてかなりドキドキしたものですが・・・・ねーじゃねーかー！！（馬鹿）



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評論（書籍） 天国の本屋 恋火

天国の本屋 恋火 (小学館文庫)

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松久 淳 田中 渉
小学館
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著者:　松久淳＋田中渉
初版:　2004年6月1日
種類： ヒューマンドラマ　
５段階評価:　4・・・ちょっとベタかな（笑）

　リストラピアニスト、健太は謎のアロハシャツ男ヤマキに声をかけられ、天国の本屋に短期バイトとして連れてこられた。そこで彼は、ある女性ピアニストに出会う。その女性こそ健太がピアニストになるきっかけとなる人物だった。一方現世では飴屋の娘香夏子が商店街復興のため、花火大会開催に向け奔走していた。この二つの物語が重なる時、小さな村に、大きな奇跡が起こった・・。

全体的にほんわかな感じの本です。内容も重くないですし、1時間もあれば読めるかもしれません。ピアノ、花火、絵本が作品のキーワードとなってますが、絵本は実際にある作品が随所に扱われていて。知ってる作品が出てきたときは嬉しかった。登場人物は皆前向きなので読んだ後、とても気持ちよい気分になれるんじゃないかな？

不満は、花火職人の瀧本が自分の昔話をする時「昔、男がいましいた・・・」って話し始めたり。やる気の無かった青年団が老人の一声でやる気になったり。べただな～っと思う部分もあった事です。

読んで思ったのだが、この作品、花火師を主人公にした方が面白いのでは？10年越しの恋に悩みながらも夏子との出会いによって前に進む状況など実に面白い人間ドラマになると思うのだが・・。

総評としては悪い本ではないって感じかな？良い本なんだけど物凄く印象に残るって感じでもなかった。この作品は映画が先らしく、その後本になったようです。どうやら映画を見た後の方が楽しめるようなので今度見てみようかな～・・・。