評論（書籍） とある飛空士への恋歌<1>

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)

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犬村 小六
小学館
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著者:　犬村小六、　イラスト： 森沢晴行
初版:　2009年2月23日
種類:  恋愛ファンタジー
5段階評価:　3・・・壮大な序章


舞台となるのは空飛ぶ島・イスラ。
突然、世界に現れたこの島は人々の夢を乗せることになる。

まだ誰も到達できなかった場所
多くの冒険家が幾たびも挑み、そして何人かは帰ることすら出来なかった。

『空の果て』

選ばれた人々は、
この浮遊島で生活をしながら目指すのだ。

「旅立ちなんかじゃない、
　これはきれいに飾り立てられた追放劇だ。」

式典を横目に飛空機エル・アルコンを操縦するカルエルは、
6年前の「風の革命」によりすべてを失った元皇子である。

身分も家も名前も父親も、そして愛する母親を失った革命…そして憎しみは全てイスラ管区長であり「風の革命」の旗印であった少女ニナ・ヴェントへと向けられた。彼が追放と評した島への移住を決めた理由は自分を救った家族に迷惑をかけたくないと言う想いと、ニナへの復讐のみ。

だが、少年の運命は何時だって残酷である。

どこか世間離れをした愛嬌のある少女・クレア。
彼女との出会いが少年を狂わしていく…。


欠陥だらけの主人公。
下手をしたら駄目な烙印を押されそうな危うさはあるが、どこか憎めない性格となっている。

憎まれ口をしていても彼が絆を大切にしている様子が伺えるし、
達観した態度を取っていても結局は未熟な少年であり誰かの助けを借りなければ生きていけない描写がきちんと描かれている。そして、そのもどかしさが何とも愛嬌があっていいのだ。

『追憶』の様な熱さは感じられなくて残念だけど、
人の絆、暖かさ、その大切さを感じることが出来る。

少し気になったのがカルエルの父親が国民に異常なまでに憎まれている理由。
きちんとした描写は無かったけど、一体どんな政治だったんだろうね。

まあ、細かいことです。

ただ明らかに続巻を意識した構成になってるので物足りなさは確実にあります。
どこかに盛り上がりと、それに対する着地点を付けてもらいたかったですね。

とりあえずは第1巻。
きちんとした評価は次巻以降ですね。


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評論（書籍） とある飛空士への追憶

とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い)

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犬村 小六
小学館
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著者:　犬村小六、　イラスト： 森沢晴行
初版:　2008年2月24日
種類:  恋愛ファンタジー
5段階評価:　4・・・面白いけど無難だなぁ


世界は2つの国から成り立っていた。
西方大陸の神聖レヴァーム皇国、東方大陸の支配する帝政天ツ上大瀑布と呼ばれる大きな段差、
海域にある滝を挟んで1万2000キロメートル隔たった大国は長年戦争を続けていた。

狩野シャルルは両国の血を持った混血故に迫害され続け、
その上、母親が酔漢に刺殺されて以来１年、天涯孤独の身であった。

そんな時、シャルルは一人の少女との出会いを思い出す。
その大切な思い出は常にシャルルを救い出し、負けない気持ちを生み出していた。

「もう泣かないって約束してね。」
「寂しくても、悪いことしたらダメだよ。分かった？」

彼が飛空士となれたのも、
彼女の言葉を純粋に信じてきたからなのかもしれない。

ある日、飛空士としての頭角を見いだされたシャルルは重大な任務を任される事となる。
それは皇国皇子カルロの許嫁であるファナ・デル・モラルを極秘に送り届けること。護衛は無し。その上、戦闘機の性能は相手国の方が上ときている。距離にして万2千キロの単機敵中翔破。

通常なら無謀で無駄で、あまりにも馬鹿らしい任務である。

だがシャルルは引き受けた。

彼は会ってみたかったのだ。
数年前に自分と会った少女、自分を救ってくれた少女に。


発売当初から売れたわけではなく、ネットで徐々に人気が広がっていった作品である。
2009年には『このライトノベルが凄い』にも選ばれている。

天と地ほどの遠い存在である二人の恋の物語。
シェイクスピアが好きなら絶対に手にとってもらいたい作品である。

繊細な描写が読者の嗜好を上手にくすぐり、二人の淡い恋心を読者も一緒に感じることが出来る。
その繊細さが想像力を引き立てる。二人が佇む土地も、二人が見つめる綺麗な景色も、そして迫力満点な戦闘シーンすらも自分がそこに居るかのような錯覚をうける。

丁寧…実に丁寧な描写で正直に言うと「ダリｲ！」って場面もしばしば。

つまり、説明文が多いのだ。
戦闘機や兵器・武器、その説明がサラって感じじゃなく、とにかく長い。

申し訳ないが、私はいくつか飛ばしましたよ（汗）

それに間違いなく「王道」な作品なので読書好き、または映画などで物語に慣れている人には先の展開が読みやすいので物足りないでしょう。

綺麗にまとまった作品。
それだけに、どこか虚をつく展開が欲しかったですね。



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評論（書籍） てめぇらとっとと金返せ！―魔術士オーフェン無謀編 1

てめぇら、とっとと金返せ! (富士見ファンタジア文庫―魔術士オーフェン)

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秋田 禎信
富士見書房
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著者:　秋田禎信、　イラスト： 草河遊也
初版:　1996年2月25日
種類:  ファンタジー
5段階評価:　3・・・まだまだ良し悪しの差が多い


某雑誌にて連載していたオーフェンシリーズの短編集です。
秀逸な作品も多かったけど、カオスな作品も多かったシリーズですな（笑）

とりあえず各話の感想を書くとしますかね。


『てめぇらとっとと金返せ！』
短編シリーズの第１作。よくある話と言えば、よくある話です。

1週間で無理矢理書いた作品と著者も述べた様に、結構な荒削り作品となってます。
まあ期間を考えれば当然かね？

世界観や設定を活かしてはいないけど、
雰囲気は味わえると思います。

『とにかく1回死んでこい！』
2作目、まだまだ荒削り。ドラゴンの密輸を地人達と行う話ですが、
本編シリーズを通してミスト・ドラゴンが出てきたのはこれが初めてです。

盗賊の女ボスは掘り下げれば味のある人物になるっぽいと当時は感じたものです。
良い作品もあっさり終わっちゃうのが、短編の良い部分でもあり悪い部分でもありますな。

『ひとの話を聞きややがれ！』
ついに無謀編ヒロイン・コギーの登場。
初めて読んだ時は大人な女性をイメージしたんですけどね（失笑

この話は少しオーフェンらしくないなっと感じました。
いかに魔術士がフェミニストでも無関係な人まで巻き込むのはギャグ路線とはいえ、
本編とのギャップが大きすぎる様な気がする。

それにしても「派遣警察官」って今思うと不思議な単語だよね。
権力があるんだか無いんだか、よく分からん。

コギー位しか比較対象がいないから分からないけど、
派遣警察位の実力じゃあ魔術士などの犯罪には対処出来ないんじゃないだろうか？

『なんでお前はそーなんだ！』
何故か人気の回、切り裂きポチョムキンです。
ダイアンって随分最初から登場してたんだねー。絵による直接的な描写が無い不思議な人物です。文章のみの解説だとフォルテやチャイルドマンと被りそうだけどね。

とりあえず笑いもあり、緊迫感も持ち合わせた絶妙な比率をもった回でした。

『いいから死人は黙ってろ！』
白魔術師が本編よりも先に登場するとは思わなかった回。

逆に乗っ取られる話ってのは今では有り触れてるけど、当時はどうだったのやら…。
それと訓練を受けたオーフェンならまだしも地人にまで効かない精神支配。

本編を不安に思ったのは私だけではないはずです（汗）

『思えば俺も若かったー青春編』
「プレオーフェン」と言われてる、キリランシェロ時代のオーフェンの物語シリーズです。
無謀編の中でも一番好評なシリーズであり、後短編集ではチャイルドマン教室の面々が活躍していて面白い。ファンが一番読みたくて知りたかったことが凝縮されてて私も大好きである。

この回ではハーティアしか出てこないが、
本編さながらの緊迫感が他収録物語と相反してるので丁度良いです。

天人の遺産による殺戮兵器。
本編でも出てくる単語が満載でワクワク感が止まらなかった。

最後のドンでん返しも素晴らしいですな。

生意気なキリランシェロも、
何か根っこの部分は現在のオーフェンと変わらないなっと感じて嬉しくなる。

自分を「変わり者」と評するキリランシェロですが、
なんだかんだでチャイルドマン教室の生徒は全員がそうだと思います。

それが魔術士として凄い力を持っていたにもかかわらず、
全員が大成出来なかった理由なのでしょう。

それでも現在はそれなりに幸せな結末を迎えられたのは「変わり者」だったからなのだろう。
ああ、早く続編が読みたくて仕方ない。まだまだ先は長いなー。


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評論（書籍） 涼宮ハルヒの消失

涼宮ハルヒの消失 (角川スニーカー文庫)

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谷川 流
角川書店
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著者:　谷川流、　イラスト： いとうのいぢ
初版:　2004年8月1日
種類:  SF/ファンタジー
5段階評価:　5・・・長門ファンなら買いでしょう！


今、俺の周りではおかしなことになっている。
谷口が可笑しいのは世界の常識なのだが、国木田まで理解しかねる状況だ。

「涼宮ハルヒ？それ誰？」

おいおい、あんな破天荒な人間を忘れるわけないだろう…？
もしかして忘れたくて言ってるのか？

どうやら冗談どころではないようだ。
むしろ、かなり深刻であることは理解した。

ハルヒだけではなくSOS団自体が無くなってしまってる。
朝比奈さんや鶴屋さんは俺を知らない。長門も読書好きな文芸部員でしかない。
古泉に至っては教室ごと無くなっていた。

まさに「消失」してしまったのだ。

俺の記憶が？
俺の過去が？
俺の世界が？

事態はさらに追い打ちをかける。

笑顔で教室に現れた少女は朝倉涼子。
俺を殺そうとして長門と対立し「消失」したはず。

なあ、長門よ。頼れるのはやっぱりお前しかいないみたいなんだ。
何かヒントはないのかね？


ページ数も多くなく、活字慣れしてる人なら2時間で読めるのも嬉しいですね。
それでいて無駄が無く行数稼ぎを感じないので贅沢な一冊に思えるでしょう！

ハルヒが従来のウザイ人物ではなく、ただのツンデレになってるのも注目。
なにより世界に暇を持て余していたのにキョンと出会うことで、活き活きとしてくる。

これは第一巻と通じる。
結局ハルヒが生きる世界は周りを巻き込み賑やかに生きてこそなんでしょう。

あと、何と言っても長門いいです。
長門でご飯が何杯かいけそうです。

ただ、それと同時に長門に対して辛い感情が生まれてしまう。

長門は自分の理想に生きたかったのだ。
今回キョンが垣間見た世界は、まさに長門の望んだ世界であり、そこにハルヒは居なかった。
ハルヒに振り回される仲間を何時だって助けてきた彼女の、ほんの少し生まれた感情。

結局はキョンの考えを優先してしまったのかなと思うと少し悲しいですな。

微笑んだり、怯えたり、一人の男子生徒に興味を示したり。
今まで見せなかった人間らしい感情を持った彼女は、まさに一人の女生徒だった。

何か「シリーズ最高傑作！」とか「周囲が言う程ではない」とか言われてますが、この作品は難しく読む必要はないんじゃないだろうか。今まで積み上げてきた人物像を覆し、そのギャップを楽しむ。伏線は所詮は薄皮の饅頭なんだし、ただひたすらギャップのある世界観に至福を感じるのが正しいんだと私は思います。こまけーことはいいんですよ。

欠点はキョンの台詞が、どれが回想で、どれが実際に発してる言葉か分かりづらいです。「　」が付いてない言葉でも周りが応えてたりする。決して読みにくいわけじゃないんですが違和感を覚えました。



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評論（書籍） 東京ナイトメア―薬師寺涼子の怪奇事件簿

東京ナイトメア　薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)

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田中 芳樹
講談社
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著者:　田中芳樹
初版:　2002年4月15日　
種類:　ミステリー / ファンタジー
５段階評価:　4・・・疲れた時には


　薬師寺涼子と泉田警部補が再び事件に巻き込まれる。舞台は結婚式場。新婦といとこである涼子と何故か連れてこられた泉田、そして新郎といとこである由紀子はその場所で暇を持て余した。しかし、それもつかの間、そこで殺人が起きてしまう。さらに涼子達は目撃してしまう。人外である、有翼人がそこにいたのだ。


例によって大暴れする薬師寺涼子。今回の相手は警察関係や政治関係の裏世界。なので薬師寺涼子の台詞は本当にハラハラ物（笑）全部が本当ってわけじゃないけど、全部が嘘ってわけでもないんでしょうね。

前回と月日がどれだけ経ってるのかは分かりませんが、随分と泉田警部補が成長（同類化）してるのも今回の特徴である。身長、射撃、柔剣道、全てにおいてＳＰとしての水準をクリアしていることが明らかになり、さらに薬師寺涼子が彼に謝る場面すらある。時々、薬師寺涼子よりも前に出るようになったのもある意味成長したのだろう。

今回も推理はありません。

なのでこの巻で作品のテンポが掴めるかもしれません。ギリシャ神話の怪物達が出てきますし、どちらかと言うと一緒に冒険する感覚に近いですね。読み応えのある台詞が非常に多く、これを毎巻ずっとやってけるのかと心配になる程である。

最後はツンデレも見れたのでそれだけで次の巻も見たいと思えました。由紀子も泉田のことを高く買い始めてるみたいなので、そちらの人間関係も楽しみです。

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評論（書籍） タイム・リープ―あしたはきのう―

タイム・リープ―あしたはきのう (上) (電撃文庫 (0146))

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高畑 京一郎
メディアワークス
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著者:　高畑京一郎
初版:　1997年1月25日
種類： SF
５段階評価:　5・・・抜け目無し！ 

　ごく普通の女子高生・鹿島翔香。彼女は昨日（月曜日）記憶が無いことに気付いた。その謎に頭を悩ませていたところ、自分の日記に辿り着く。そこにはこう書かれていた

「あなたは今、混乱している。・・・若松くんに相談しなさい。最初は冷たい人だと思うかもしれないけど、彼は頼りになる人だから。」

学内でもかなりの優秀の彼だが、人を寄せ付けない雰囲気の彼とはほとんど会話をした事が無かった。どうして彼に？しかし、この文字は確かに自分・・・。しかし、すがる人は彼しかいない。意を決して話しかけた時、彼女の長い一週間のタイムトラベルのパズルが始まる。


はっきり言って、こんなにワクワクして読んだ小説が本当に久しぶりだった！ただのタイムトラベルではないのだ。ランダムに訪れるタイムトラベル。1週間の曜日がバラバラなのだ。これだけでも実に斬新で新しい。

本当に精密に組み込まれているので書いた方が本当に頭がきれると実感出来る。途中意味不明だった箇所が後半になればなるほどバッチリはまるものだから上下巻と言えども絶対に2冊とも一気に読破してしまうでしょう。しかし、読み終わった後はなんと爽快なことか！

とにかく会話が多いのがこの作品の特徴だが、これは実に上級なレベルに達しており、むしろ「足りねーよ！」と叫ぶ程（笑）

まあ、ひとつだけ欠点を挙げるなら文章がちょっと古いってとこでしょうか？ヒロインが「心配したんだからぁ」と若松君をポカポカしている最中に第3者が「ここに一人いる事を、忘れちゃいませんか？」と割って入る場面はまるで1997年の作品ですな（1997年の作品です）。

気になるのはその1点だけ。それも凄く些細な事で完成度の高さはかなりの高水準。1度読みでワクワクを、2度読みでニヤニヤ。何とお得な作品！読むべし！



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