イヴは夜明けに微笑んで―黄昏色の詠使い

イヴは夜明けに微笑んで―黄昏色の詠使い (富士見ファンタジア文庫)

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細音 啓
富士見書房
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著者:　細音啓、　イラスト： 竹岡美穂
初版:　2007年1月25日
種類:   ファンタジー
5段階評価:　4・・・読了感が心地よい


「ボクと勝負をしないか？」

始まりは少年と少女の約束

赤、青、緑、黄、白　　　
この五色を基本に成り立つ名詠式。

少年はその全てをマスターする虹色名詠士。
少女は存在しないとされる夜色名詠士。

「……もし完成したら、一番最初に見てくれる？」

誰もが無謀と思う目標を少年と約束した。

少年と遠く離れても、
少女は少年との誓いを目指して研究を重ねた。

自分の出来る全てを持って
最短距離を目指して

短い命をかけて


世界観は決して広くはないが、
何故かとても壮大で奥深い物を感じる。

今と昔、4人の少年少女の果たしたい物への信念もさることながら、この世界の魔力の源と言える“名詠”と、そのための“媒体”。それを著者が無理なく、そしてうまく形にしているからこその完成度なんだと思います。

詩…でいいんですかね？
それがとても繊細で切なくて、そして美しい雰囲気として作品を彩っているのだ。
よく思いつくものだ。著者は立派な文学者ではないだろうか。

ネイト達の立ち位置も丁度良い。
才能の片鱗を見せるも幼くて、実力はあるのに世間を知らなくて、本当は凄い自分ってのを理解してないのも面白いですね。それだけ約束に対して実直で盲目なんでしょう。これからの成長を考えるとワクワクするものが込み上げてきます。

イラストも凄く合っていたと思います。
ラノベにおいてイラストの重要性は大きいんですが、これは良いですね。
淡い表現が文章と相性が良かったと思います。

王道ではあるけれど、その完成度の高さからか惰性は決して感じません。
きっと新鮮な気持で読めるでしょう。

今作では主人公達よりも数年前の少年少女達の約束が主軸のせいか、
主人公であるネイト達学生人の影が薄いですが、次巻以降に期待って奴ですかね。

ラノベとしてかなり上位に来る作品です。
ファンタジーが好きなら読んで損はないと思いますよ。

ただ、難点は人物の多さです。
ただ多いだけなら普通なことですけど、この作品は後半に一気に人物視点の切り替えが増えます。それまでは主人公二人だったのにいきなり、今まで物語の端っこにいた人達にコロコロ変わるので読みにくいと言えば読みにくいです。