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浅田 次郎
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義理と人情と楽観主義。。。彦四郎の生き様
大衆小説の傑作
落語的にはじまり、後半シリアスな展開に
生きることは素晴らしい
時は幕末
彦四郎はまさに理不尽な不幸に悩まされていた。文武両道でマジメで周囲から慕われる彼には唯一欠点があった。それは次男に生まれたこと。次男であることから家督は継げず、婿として養子になるも子供が生まれた途端に離縁され、結局実家に戻ってきてしまっていた。
厄介者になっていまった彦四郎は蕎麦を食う金も母の駄賃で食べる程に惨めな物で、まさに“ついていない”の一言だった。
しかしある日、彼に転機が訪れる。
飲んで酔った夜の道。彼は小さな祠を見つける。
「三巡稲荷」
そこにはそう書かれていた。そば屋の親爺は言っていたのとは少し違うが構うまい。駄目もとで彦四郎は手を合わせた。
かくして、後日に彦四郎の前には確かに神が現れるのだが……。
面白かった・・。
久しぶりに余韻に浸れる作品にあった。
物語の舞台は今よりも昔。今だお家柄や身分を重要とする時代で、主人公の彦四郎はその時代の次男坊として生まれている。文武に秀いでた彦四郎が理不尽に悩む姿はまさにこの時代ならではの苦悩であり、面白かった。
前半は、まるで舞台で喜劇を見ている感覚で読むことができ、のめり込む。しかし後半で一気にシリアスに持って行っている。この作者は本当に凄い作家だと思う。
さてこの作品の見応えは、何と言っても彦四郎の生き方や考え方にあると思う。自分を陥れ、憎むべき相手にすら慈愛を見せる彦四郎の姿には誰もがやきもきしてしまうだろう。文武に秀でてるが、運が悪い。でも要領が良ければきっと彼は幸せに生きることは出来たのだろう。しかし、彼はそれを良しとせず、頑なに自分の生き様を大切にした。その姿は物悲しくもあるけど、羨ましくもある。
そんな彼にとって、憑神が付いたことは何をもたらしたのだろう?
私は憑神に出会わなかった彦四郎は、きっと生き甲斐を見つけることは出来ず、結局のところ不幸に終わったような気がします。憑神に出会ったからこそ苦悩の中で自分を見つめる時間が生まれ、そしてひとつの答えが
出せたのでしょう。
「戦は勝ち負けではない。勝ちっぷり、負けっぷりじゃ!」
武士の時代が終わることを認め、しかし武士道は失いたくなかった。その悩みが憑神との出会いよって解消されていく。最後まで誇りを捨てずに輝き続けた彦四郎の姿に、憑神とともに引き込まれることでしょう。
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