評論（書籍） ミミズクと夜の王

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

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紅玉 いづき
メディアワークス
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著者:　紅玉いづき、　イラスト： 磯野宏夫
初版:　2007年2月25日
種類:  ファンタジー
5段階評価:　4・・・ライトノベルには属さない


魔物のはびこる深い森
誰もが近寄らぬ暗い森

人々が恐れる夜の王がいた。

近づく人間は恐ろしい目にあるらしい。
終いには食べられてしまうらしい。

だがそこに、一人の少女が訪れた。

額には「332」の焼き印
手足には外れることのない鎖

例えば、奴隷を表現することに必要なものを凝縮したら、
きっとこの少女の様な姿になるのだろうか。

「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」

少女は叫ぶ。
言い伝えを信じて。

「去れ、自分の場所へ。帰れ、人の娘よ。」

しかし魔王は拒絶する。

死にたがりのミミズクと、人間嫌いな魔王。
それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。


あまりにも綺麗で、
あまりにも完成度が高くて、
そしてあまりにも無駄無く畳まれた作品です。

挿絵が一枚も無いのがそれを際だたせますね。
ただ、それ故に印象に残りにくい。

良くも悪くもライトノベルってジャンルにはならないと思う。

ストーリーは悪くない、確かに感動する。
ただ「普通」ではある。 「安直」でもある。

それとなんだろう……読了感が少女漫画を読んだ後って感じ(分かりづらい？）
魔王が実は元人間で、しかも元王子様…ああ…なるほどね……女性作家の作品ですね。

純粋な人には向いてるかもしれません。
展開は少女漫画、雰囲気は絵本ですかね…。

第13回電撃小説大賞＜大賞＞受賞作らしいですけど、
これをライトノベルとして受賞させた審査員は懐が広いなぁなんて思ってしまいました。

あと、私はどうも主人公・ミミズクが好きになれなかった。
純粋ゆえにあまりに一直線過ぎてね…。人間側の良い人達がミミズクのために頑張ってるのに我関せずって感じで虚しかった。せめてもっと感謝を表現してもいいと思うんですけどね。

結局のところ誰も不幸にならない幸せな物語。
万人向けな作品ですし、安心して人に勧められる一冊ではあります。

 

評論（書籍） 機巧少女は傷つかない 〈4〉

機巧少女は傷つかない　4 (MF文庫J)

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海冬 レイジ
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著者:　海冬レイジ　イラスト： るろお
初版:　2010年10月30日
種類:  学園ファンタジー/バトルアクション
5段階評価:　4・・・そろそろ登場人物は絞った方が(汗)

「パンツを脱いでください雷真！」

「前置きもなしに何だ！」

「本日はお日柄もよく－」

「その前置きからどうやってパンツにつなぐ！？」

前回の時計塔事件より数日が経とうとしていた。
あれだけの騒動でありながらも何時もの日常を過ごしている雷真だが、その裏にはシャルの素直な謝辞と、学院長のフォローがあってこそだった。

“夜会”も無事勝ち進んでいた雷真、ロキ、フレイであったが、
何者かの口添えにより夜々は雷真のもとを去ることを決意してしまう。

だが、それはもちろん敵の罠…。
“十字架の騎士”を名乗る彼らの登場に雷真は何も出来ずにいた。

途方にくれベンチに座っていると、
聞き慣れた声が耳に届く。

「あきれたわね、坊や。なんてざまなの」

ふと鼻先をくすぐるクチナシの香り。
現れたのは妖艶な美女。

「硝子さん……いろり……」

彼女は淡泊な表情と口調で雷真に命令した。
それは非常に現実的で、彼にとっては非常識な言葉だった。

「夜々は放棄するわ。今後はいろりを使いなさい」

言われたことが理解できず、
雷真は呆けた顔で硝子を見た。


第4巻で物語は一気に加速。
今まで(個人 対 個人)の戦いだったのに対し、明確に(仲間 対 組織)に変わりつつあります。
それ故に登場人物が非常に多くて、それが面白いんだけど不安にもなりますね。

1巻から登場人物はどんどん増えていく。
そしてほとんど退場していない。
毎巻、全員が登場する。

今はうまく立ち回ってるけど、いい加減限界は来ると思う。

例えば今巻ではロキの小さな物語があっさりし過ぎていて、
何だか出番を増やすために付け足した印象を感じてしまう。

もっとじっくり、たとえば番外編としても良かったかも。
どの人物にも愛着はあるんだろうけど少しくらい間隔を空けさせてもいいんじゃないかな。
敵も大勢登場してワクワクしていたのに後半一気に小物化してがっかりだ。

ただ、アリスは思ったよりも憎めないエッチな娘だったのが好感触。
私は雷真になりたい。雷真になって誘惑に忠実にされど正義を貫くふりして夜々とのセッションも忘れずにフレイとの楽しい一時を堪能してシャルとアンリで姉妹仲良く俺と仲良くってそれ雷真ちゃう！俺や！

しかし、物語は全く架橋に入る気配を感じず、今巻の大きな敵はあっさり退場。
どうするんだろうね。

今のところ楽しく読んで読破していきたいと思います。

それにしても夜々も雷真も面倒な性格だね。
特に今回は、彼の行動が身勝手過ぎて周囲の気遣いすら無視してるんで意外だった。

まあその実直さが彼の魅了でもあるんだけど。


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評論（書籍） 機巧少女は傷つかない 〈3〉

機巧少女は傷つかない３　Facing "Elf Speeder" (MF文庫J)

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海冬 レイジ
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著者:　海冬レイジ　イラスト： るろお
初版:　2010年7月1日
種類:  学園ファンタジー/バトルアクション
5段階評価:　5・・・何故ならアンリもまた、特別な存在だからです


『貴方って、本当にビッグベン級のバカ！』

シャルを怒らせ、そして涙を見たのが10日前。
雷真はそれから彼女を見ていない。

ひょっとして怒らせたかもしれない。

（それはまずいな…ん？）

入院している病室の窓から見える人物。
シャルに似ているようで、やっぱり違う少女が佇んでいる。

アンリエット・ブリュー

シャルの妹であり、何かに怯え、
すぐに自殺を図ることで知られているらしい。

アンリが現れ、程なくして学園に事件が起こる。
学園のシンボル・時計塔が破壊されてしまったのだ。

周囲から挙がる犯人の名はシャル
自分が目撃した少女の名前はシャル

アンリには何かあるはずだ！

シャルが消えた理由も！
シャルが起こした不可解な騒動も！

「アテにしてるぜ、勝利の女神」

「おともします雷真。
　雷真が行くところ、他の女のベッドの中でも」

物語第3幕も賑やかに幕を開ける！！


相変わらず期待を裏切らない一冊。
とにかく面白い。

前回登場したフレイとロキがレギュラー化しているが、決して無理な登場にはなっていない。
今回の物語のは不可欠な存在になっているし、疾走感を増す手助けにすらなっているのだ。

それは今回のヒロイン・アンリにも言えることです。

彼女の立ち位置が雷真と重なることで、雷真が拘る理由にもなる。
次第に雷真の過去の秘密が自然に露呈する結果となっているんですよ。
登場人物全員が無駄ではないのである。

それと個人的には無駄な解説が少ない点が大合格となってます。

ライトノベルって(一般文庫にも当てはまりますが)、
やけに説明文が多くてウンザリな作品が多いんですよね。

扱ってる武器、今居る建物の構造や部屋の配置、人物に対する細かい観察文。
正直「行数を稼いでるだろ」っと思えてしまう程の無駄な文章。

それがこの作品には無いのだ。
その上でテンポ良い会話が多くて実に心地よい文章体になっている。

だから読んだ後の心地よさが半端ないんです！
それに登場している女性キャラが本当に可愛い。間違った方向に積極的になる愛情表現も、それに疲弊してしまってる雷真との関係もニヤニヤ物です！新しく女性が登場すると、その愛くるしい姿とクセのある性格で、一体どういう風にアピールしてくるのかと思うと、もう感謝！圧倒的感謝！ (カイジ)

それにしても気になるのは今回の事件の首謀者・アリスのセリフ

「僕が何のために八七位なんてしょっぱい順位につけたと思うんだい？」

前回のロキといい、上位の生徒は自分の順位を自由に付けられるのだろうか？
しかし、だとすると下位の生徒が無意味に上がってしまうし…うーん？

まだまだ物語は序章にしか過ぎない。
とりあえず次巻を楽しみにするとします。

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評論（書籍） 機巧少女は傷つかない 〈2〉

機巧少女は傷つかない〈2〉 Facing "Sword Angel" (MF文庫J)

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海冬 レイジ
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著者:　海冬レイジ　イラスト： るろお
初版:　2010年3月31日
種類:   学園ファンタジー/バトルアクション
5段階評価:　5・・・良い意味で王道的主人公！

前回の事件により“夜会”への参加を認められた雷真だが、
その順位は100位であり目標には今だ遠い立場であった。

大会は下位の者から始められる。
つまり雷真が初戦を飾ることになる。

その前日、雷真が自室に戻ると不思議な物体が部屋の中央にぶら下がっていた。
ネット。魚網の様な物の中にあるのは、白くて、なめらかな何か。

「まさか……ハニートラップ！？」

「……いや、どこもハニーじゃないだろ」

「そんなにパンツが好きなら、夜々のを見てくださいっ夜々のを！」

「たくし上げるな！恥じらいを持て！」

自分で作ったトラップに掛かった少女の名前はフレイ。
雷真の初戦の相手であった。

彼女の真意は何なのか？

ともかく夜会は賑やかに幕を開ける。

2巻にも面白かったです。

新たなヒロインが登場して、それがまた可愛いのだ。
アニメ化したら初登場シーンは是非忠実にお願いします！！

主にパンツ的な部分ね！(血涙)

また、主人公・雷真は格好良いですね。
王道熱血って感じで昨今の主人公では見られない傾向が私の好みでした。

信念があるはずなのに、直ぐに他人の為に猪突猛進な性格は確かに疑問だが、
だからこそ周囲が惹かれる何かがあるのだと思います。

人生守りに入った主人公は嫌ですよ(笑)

会話の掛け合いも変わらずテンポ良く心地の良いもの。
夜々の雷真へのアプローチは芸術の域である。

ただ、夜会のルールで、まだ自分が（読者達）が知らない部分が多いみたいなので説明が欲しいところ。上位の生徒が自主的に順位を下げられるとか知らなかったしね。意外性よりも「ありなんだ？」って

驚きが強かった。まあ、そこは明確に説明しない方が後の展開を臨機応変に書けるとは思うけどね。

とにかく脇道的な回ながらも複線はしっかり散りばめてる様子。
次巻も楽しみである。
 

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評論（書籍） 機巧少女は傷つかない 〈1〉

機巧少女は傷つかない〈1〉 Facing "Cannibal Candy" (MF文庫J)

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海冬 レイジ
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著者:　海冬レイジ、　イラスト： るろお
初版:　2009年11月30日
種類: 　ファンタジー学園/バトルアクション
5段階評価:　5・・・夜々可愛いよ夜々！

世界には“魔術”が存在していた。魔術は魔術回路を経由し、自動人形(ドール)を動かす。少年・雷真

の自動人形は夜々。一見にして普通の少女と変わらぬ姿や立ち振る舞いは、まさに完璧な人形として少年の魔力を証明していた。
 

雷真が、ここ英国ヴァルプルギス王立機巧学院に入学した目的は“夜会”に参加し“魔王（ワイズマン

）”になること。そして、更にその先を見つめる未来には迷いはない。

「行けるか、夜々」

「はい。雷真のためなら、たとえ火の中、お布団の中」

物語は賑やかに幕を開ける。



ＭＦ文庫からは絶大な支持を得ており、第1巻の時点でイメージCDやら何やら漫画化やら多くの企画が進行形で進む異例の作品である。自動人形（マシンドール）のバトル物と言うことで難しい内容ではなく、取っつきやすい。

展開は王道中の王道なので嫌いな人はいないと思う。それに加えてキャラクターが可愛くも格好が良いので誰もが「夜々は俺の嫁」症候群になるのは必須である。
 

その上で、意外性もきちんと付いているのだから面白い。近頃、変に“ネット”や“萌え”に媚びてる

作品が多い中（タイトルや、設定だけ秀逸な作品ってこと）、こんな雰囲気の作品って実は最近では珍

しい。
 

ただ、あまりに王道すぎるので他作品と比較して突起している部分が少ないのも事実。

ですが1巻使っての序章って感じで、まだまだこれからの作品。

次巻以降が楽しみです！

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評論（書籍） 魔天楼―薬師寺涼子の怪奇事件簿

魔天楼　薬師寺涼子の怪奇事件簿 (講談社文庫)

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田中 芳樹
講談社
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おすすめ度の平均:

講談社ノベルス版には追加短編
田中芳樹独特の爽快さはあるけれど……
泉田君働きすぎ。
いきなり大暴れ
ストレス解消にこの一本！
 

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著者:　田中芳樹
初版:　1996年10月15日　
種類：　ミステリー / ファンタジー
５段階評価:　4・・・推理物ではありません

　東大・法卒、27歳。そして誰もが振り返る美貌の持ち主こそ警視・薬師寺涼子その人であった。キャリアもあり、実績もある彼女だが、その性格に問題があるのだ。とにかく自分中心な性格は誰もが迷惑し、父親が元警視庁幹部なものだから誰も何も言えない。そんな彼女を人はドラキュラもよけて通る「ドラよけお涼」と評するのだった。そんな彼女の腹心であり相棒であり下僕である泉田準一郎。二人は今日もばく進中である。


今回は東京・湾岸副都心の巨大な複合ビルで連続する連続大量殺人が主な事件である。が、ここで登場するトリックはネタがありません。つまり犯人なんて存在しないんです。それが知らずに推理物だと読んでいた私はかなり焦りました。残り40ページでも犯人のトリックを暴く雰囲気がさっぱりだったんで（笑

周りの評判を見る限り、残りの作品も決して犯人が登場するってわけではなく、
突如現われる人外の物と戦うみたいです。

つまり、だ。

この作品はトリックを暴く推理物ではないのである。楽しく読むために大切なことは、やっぱり薬師寺涼子の言動ですっきりすることでしょう。本に載せて良いのか？って位、この世の中をばっさり斬ってくれますし、何故か気分が悪くならない！（廃れた証拠）

全体的にテンポは良いですし、推理物じゃなかったけどやっぱり良作なんじゃないかなっと思います。一気に読めますし暇つぶしには最適な一冊じゃないでしょうか？


余談
『ドラよけお涼』と聞いてスレイヤーズを思い出すのは私だけでしょうか？



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